不登校でも勉強を諦めたくない中学生の皆さんへ / 2.独学の場合の勉強法

 以前の記事で、不登校の子の勉強のやり方について書きました。今回は、塾・通信教育などに頼らず参考書などを使って独学で勉強したい皆さん向けの勉強法について書いていきたいと思います。

 

 

はじめに――勉強とは何か

 勉強するということは、「インプットとアウトプットの繰り返し」です。
 情報を中に入れることがインプット、情報を外に出すことがアウトプットです。具体的にいうと、「映像授業を見る」「参考書の説明を読む」などがインプット、「問題演習をする」「話したり書き出したりする」ことがアウトプットです。
 では、インプットとアウトプット、どちらが大事なのか。これには答えがあります。「基礎の段階ではインプット」「基礎が終わってからはアウトプット」が重要です。
 最初は、参考書を読んだり映像授業を見たりのインプットに時間をかけましょう。それが終わって大体分かってきたら、問題を解くアウトプットに時間をかけましょう。つまり、最初に参考書や映像授業で基礎を理解したら、あとはひたすら問題集をやるということです。

 

勉強のやり方はスポーツと同じ

 スポーツや楽器に取り組んだことはありますか。あれば、勉強との共通点が意外と多いことに気付くかもしれません。どちらも、大きく分けて「基礎」「標準」「応用」の3段階に分かれています。
 「基礎」は、やり方を覚える段階です。勉強でいうと授業を受けること、スポーツでいうとルールや基本の立ち回りを理解することです。
 「標準」は、基礎の定着のための練習をする段階です。勉強でいうと宿題をしたりワークを解いたりすること、スポーツでいうと練習して技術を身につけることです。
 「応用」は、いろいろな知識を組み合わせたり、コツをつかんだりして、さらにステップアップする段階です。勉強でいうと塾でコツや着眼点を教えてもらったりすること、スポーツでいうと上手な人にコツを教えてもらったり、見学して技術をブラッシュアップしていくことです。

 どの段階が抜けても、本当の意味で上手にはなれません。ルールが分からなければ運動神経がどれだけ良くても試合には勝てないし、やり方がわかっていても練習しなければできるようにはならないし、世界一の選手がコツを教えてくれても自分がそのレベルに達していなければ、コツを覚えただけではできるようにはなりません。

 勉強も、これと同じです。「やり方を理解する」「身につくまで練習する」「ある程度身についたら、コツや新たな技を覚えてレベルアップ」の繰り返しです。勉強のやり方がわからない、苦手という人は、勉強に他と違うという意識を持っているかもしれませんが、実はそうでもないのです。

 

「理解してから始める」か、「とりあえず進んでみる」か


 例えば、中1数学の初めに、「マイナスとマイナスを掛けるとプラスになる」という内容があります。(−2)×(−3)=+6 になるというやつですね。これを、「そうなんだ、ふーん」と流せる人と、「なんで?理由が分からないと気持ち悪い、問題を解くことはできるにはできるけど納得できないのに進めるのは嫌」という人がいます。

 この記事や「おすすめの参考書」の記事で想定している一冊目の参考書は、どちらかというとふーんと流せる人向けです。なぜなら、理屈や原理を理解するためにはある程度の学力とかなりの時間・やる気が必要だからです。「理由がわからないから一問も解けない」よりは「理由はわからないけど解き方は覚えたから解ける」方が成績が上がるので、基礎の参考書は基礎の問題が解けるようになることの方を重視していて、理屈や原理を理解することにはあまり向いていないものが多いのが現実です。

 では、「理由が分からないと嫌」な人はどうすればいいのかというと、一冊目に入る前に、参考書を読んでおくことをおすすめします。おすすめはこちら、『やさしい中学〇〇』シリーズです。

 

hon.gakken.jp

 こちらは、中学生向けの参考書としては珍しい、問題を解けるようになることではなく基礎の理屈を理解することに特化した講義形式の参考書です。「マイナスとマイナスを掛けるとプラスになるのはなぜ?」や、「方程式って結局何?」「一次関数と比例の違いは?」などの疑問に答えてくれます。

 

 実は、最初に理屈を理解しようとすることには、デメリットもあります。特に数学や理科などの科目は、最初は理解できなくても問題数をこなしていくうちに理解が追いつくことも多いので、最初に理屈を全部理解してしまおうとすると効率が悪くなり、挫折しやすくなるのです。

 でも、暗記ではなく理解で基礎を乗り切った人は、標準・応用レベルの問題に取り組んだ時に伸びやすいというメリットがあります。
 個人的には、偏差値55〜60あたりに、ただ解き方を覚えただけでは問題が解けなくなる壁があるという印象があります。暗記で基礎を乗り切ってきた人たちは、その壁を越えるためには「基礎に立ち戻って理解する」か、「応用問題の解き方もひとつひとつ覚える」かの二択に近い状況になります。でも、最初から理屈を理解していれば、そこで立ち止まる必要がないのです。

ちなみに、偏差値55くらいまでは「理屈を理解する」「解き方を覚える」のどちらかだけでも到達できますが、偏差値60を超えようと思ったら、「理屈を理解したうえで、応用問題の解き方を覚える」必要があります。

 つまり、最初に理屈を理解してから進めた人は、スタートダッシュがすこぶる大変だけれど、中盤・後半でスムーズに進むことができるということです。
 逆に、基礎の段階では「わからなくてもそういうものだと暗記して一旦進んでおく」という手段をとった人は、スタートダッシュは楽で、スムーズに偏差値55くらいまでは進めるけれど、中盤・後半でどうしてもスピードダウンします。

 

 どちらがいいのかは、人によって違います。
 そういうものだと暗記して先に進める人や三日坊主になりやすい人は、とりあえず一冊目に入ってしまって大丈夫です。後からわからないことがでてきたら、そのときに調べればいいのです。
 理由がわからないと嫌な人や、最終的に偏差値55〜60以上を目指す人は、最初に『やさしい』を読んでおくと、その後がスムーズに進められるかと思います。

 


おすすめの勉強の流れ〈一冊目〉

 最初に基礎を理解するために使う、一冊目の参考書。これで大体インプットを終わらせてしまいましょう。
 ちなみに、問題集は何周もすることが前提なので、直接書き込んではダメです。ノートにやるか、コピーしてそれに書き込みましょう。

タブレットスタイラスペンがある人は、タブレットでスキャンして、それにスタイラスペンで書き込むという方法が便利。iPadがあれば試してみてください。

①前の学年の総復習の問題集をやってみる
 自分が何年生の勉強から始めるべきかを見極めることと、ブランクがある場合に勉強する感覚を取り戻すリハビリが目的。
 小学校・中1から行っていない人は小学校の総復習の問題集、中2から行っていない人は中1の総復習の問題集、中3から行っていない人は中1〜中2の総復習の問題集がおすすめです。もともと勉強が苦手だった人や、勉強から離れていた時間が長い人は、小学校→中1→中2 と順にやってみましょう。
 問題なく解けたら、その次の学年の範囲から。つまずいてしまったら、その学年の範囲から始めましょう。

②「解説を読む→問題を解く」を一章分繰り返す
 詳しくは「おすすめの参考書」の記事を見ていただきたいのですが、紹介する一冊目用の参考書は、ほとんどが左ページに解説、右ページに問題という構成になっています。その見開き1ページを1回分としてやってしまえばOKです。
 最初なので、間違えてもOK。でも、マルバツをつけるだけではなく、必ずやり直しをしましょう。正しい答えを青ペンでノートに書いて覚えましょう。また、数学はもう一度最初から解いてみましょう。

以前やったことのある範囲の復習中(中2から不登校になった人が、中1範囲の復習をするときなど)の場合は、この一周目は飛ばしてOKです。

やり直しについては、下の【正しいやり直しの方法】のところでもっと詳しく解説しています。一冊目の段階ではそこまで厳しくしなくてもいいですが、「マルバツをつけるだけではダメ、正しい答えややり方を覚えるところまでやる」という意識だけは持っておいてください。

 ちなみに、多くの本では数ページごとに「まとめテスト」「確認テスト」のようなページがあると思いますが、これはこの段階ではまだやらなくていいです。「確認テスト」のページが出てきたら、やらずに③に進みましょう。

③一章分終わったら、二周目に入る
 二周目のポイントは、「左ページの解説を見ずに問題を解いてみる」こと。どうしても見えてしまうので、左のページに別の本やノートを置いて隠してしまうといいです。
 間違えた問題には付箋で目印をつけましょう。もちろん、目印をつけた上で、一周目と同じようにやり直しもしっかりやってくださいね。

【間違えた問題には付箋を貼ろう】

 このように、間違えた問題の上に透明な付箋を貼っておきます。わざと、横にはみ出るように貼ります。(このタイプの付箋は、100均などで簡単に手に入ります。)

 すると、横から見た時に付箋がはみ出して、間違えた問題がどこか分かりやすくなります。問題番号にバツを付けたりマーカーを引いたりしてもいいのですが、こうして付箋を貼っておくと、「間違えた問題だけをやり直したい」というときに、1ページずつ開いて確認する必要がなくなって楽になります。

④「確認テスト」「まとめテスト」のページをやる
 二周目が一章分終わったら、次のページは「確認テスト」「まとめテスト」と言われるようなページになっていると思います。このページをやってしまいましょう。「間違えた問題には付箋を貼って目印にする」と、「やり直しをする」はここでも同じです。

⑤三周目。「確認テスト」「まとめテスト」のページも含めて、一章分の間違えた問題(付箋の貼ってある問題)だけをもう一度やる
 二周目と同じように左ページを隠しながら、右ページの付箋の貼ってある問題だけをやり直します。問題なく正解できたら、付箋を剥がします。正解できなかったら、付箋を残したまま次に進みます。

⑥付箋が全部なくなるまで周回する→なくなったら次の章に進む
 一章分、付箋が全部なくなるまで繰り返します。全部なくなったら次の章に進んで、②〜⑥を繰り返します。

⑦一冊最後まで繰り返し、付箋がなくなったら終わり
 最後の章まで繰り返して、付箋が全部なくなったら、終わりです。次の問題集に進みましょう!


一冊目の進め方のまとめ

 こちらの参考書の目次を使って、一冊目のやり方をまとめておきます。「①前の学年の問題集をやってみる」の段階は終わって、②〜の流れです。

『ぐーんっとやさしく 中1数学』より

②p.6〜p.29まで一周目をやる
→一周目は間違えて当たり前なので、まだ付箋は貼らなくてOK。でもやり直しはしっかりしておく
復習中の人はいきなり③から始めてOK

③p.29まで終わったら、p.6に戻って二周目をする
→左ページの解説を隠して右ページだけを解いてみる。間違えた問題はやり直しをして、付箋を貼って目印にしておく。

④p.30〜p.31の確認テストをする
→③と同じように、間違えた問題はやり直しをして、付箋を貼る。

⑤p.6〜p.31の、間違えた問題(付箋の貼ってある問題)だけをもう一度やる
→正解できたら付箋を剥がす。正解できなかったら、付箋を残したまま次に進む。

⑥p.6〜p.31の付箋が全部なくなるまで繰り返す。全部なくなったら、2章に進む

〜2章〜
②p.34〜p.51まで一周目
③p.34〜p.51まで二周目
④p.52〜p.53の確認テストをする
⑤p.34〜p.53の間違えた問題(付箋)だけをもう一度やる
⑥付箋がなくなるまで繰り返し、なくなったら3章へ

このような流れの繰り返しで、一冊終わらせましょう。


おすすめの勉強の流れ〈二冊目以降〉


 二冊目以降も、問題集に直接書き込んではダメですよ。また、間違えた問題に付箋を貼るのも一冊目と同じです。やり直しに関しても同じですが、こちらでより詳しく解説します。

【問題集に入る前に――「困ったときに見る参考書」を一冊決めておこう】

 特に知識問題の場合は、問題を解いているときに「どっかで見たことあるけどどこで見たんだっけ」となりがち。それを解決するために、「困ったときはこれを見る」という参考書を一冊決めて、問題を解いていて知らなかった情報が出てきたら、その一冊に全部書き込んでしまいましょう。
 時間がかかりすぎるので、ノートまとめはおすすめしません


⓪今日やる単元の範囲の参考書を読む(社会のみ)
 
社会だけは、先に参考書を読んでから問題を解きましょう。理由は後述しています。

①一周目 問題集を解く
 初めてなので、間違えても全然OK。ただ、答え合わせのときにはマルバツをつけるだけではダメ。必ずやり直しをしましょう。

【正しいやり直しの方法】

 答え合わせをして間違えていた問題は、次にその問題を解く時には必ず正解できることを目標にやり直しをしましょう。
 社会などの用語を答える問題なら正しい答えをノートに書いて、その場で覚えてしまいましょう。

 数学の場合、計算ミスなどは「どこでミスしていたか」がわかったら、答えを見ずにもう一度やってみましょう。やり方を間違えていた場合は、解説を見て理解したら解説を閉じて、解説の通りにできるよう意識してもう一度やってみましょう。全く分からなかった問題の場合は、解説を見ながらもう一度やってもOKです。(丸写しでは意味がないので、書きながら理解できるようにしましょう。)

 英語や理科などは「なぜ間違えたのか」を分析して、正しい知識を青ペンでノートに書いて覚えましょう。付箋に書いてノートに貼るのもいいです。例えば理科なら「道管(内側)は水、師管(外側)は養分」とか、英語なら「疑問文ではsomeをanyにする」「傘のつづりはumbrella」など。小さなまとめノートのようにして、問題や要点確認のページを見なくてもそこを見ただけで正しい知識を覚えられるようにしましょう。

また、間違えてしまった原因が「知らなかった」(完全に初めて見る情報だった)という場合は、「困ったときに見る参考書」にメモしたりマーカーを引いたりして、次に同じような問題で困ったときにそこを見ればわかるようにしておきましょう。

②飽きたら違う教科に移る→戻ってきて一周目の続き、の繰り返しを一章分やる
 一章分終わらせるまでは集中してひとつの教科……とかは、やらなくていいです。同じ教科をやり続けると飽きるという人は、一単元ごと。逆に一つの教科を一気にやりたい人は、問題集の一章ごとくらいを目安に、違う教科に移りましょう。「飽きたら別の教科」でOKです。一旦違う教科に移ったほうがいい理由は、後述しています。


③二周目をやる
→二周目で間違えた問題には、必ず付箋を貼る
 
一周目は間違えて当然ですが、二周目で間違えるということは、「わかってない」か「覚えられてない」のどちらかです。なので、間違えてしまった問題は、一周目と同じようにやり直しをした後、付箋を貼って後からわかるようにしておきましょう。(もちろん、後から問題集を見た時に間違えた問題がどれかわかればいいので、問題番号にバツ印をつけておくなどでも大丈夫です)

④二周目も、飽きたら違う教科に移る→戻って二周目の続き、の繰り返し
 
二周目も同じです。飽きたら違う教科をやり、その教科に飽きたら戻ってきて続き、の繰り返しで一章分進めましょう。

⑤三周目以降 付箋がなくなるまで解き直しをする→付箋がなくなったら次の章へ
 
付箋のついた問題だけを解き直しましょう。合っていたら付箋を外し、間違っていたら残します。繰り返して、その章の付箋が全部なくなったら⑤へ。

⑥ ①〜⑤を一冊最後まで繰り返し、付箋が全部なくなったら終わり
 
付箋がなくなったら終わりです。次の問題集に進みましょう。


二冊目の進め方のまとめ

⓪今日やる単元の範囲の参考書を読む(社会のみ)

①一周目
 (以前やったことのある範囲の復習中の場合は、一周目は飛ばしてOK)
 →知らなかったことは、「困ったときに見る参考書」にメモしておく

②飽きたら、他の教科に一旦移る
 →一旦他の教科をやって脳をリフレッシュさせる。飽きたら戻る
 →一章分やる

③④二周目
 →間違えたらやり直しをして、付箋を貼っておく
 →二周目も、飽きたら他の教科を挟む

⑤三周目以降
 →付箋がなくなるまで解き直し
 →付箋がなくなったら次の章へ

⑥一冊最後まで①〜⑤を繰り返す


社会だけは最初に参考書を読もう

 国数英理の4教科は、標準・応用問題といっても、基礎知識の組み合わせや工夫で解ける問題がほとんどです。最難関レベルの高校入試問題でもそうです。「こんなんどうやって思いつくんだ」みたいな工夫の仕方が多く、塾などでもその工夫の仕方を教えているだけで、教科書にも載っていないような難しい公式を知らないと解けないとか、そういうことはありません。最初の一冊目を終えて知識をだいたい覚えたら、問題のレベルが上がっても「こんな言葉見たことない」みたいなことはほぼないので、二冊目以降は知らなかったことだけを追加で覚えていけばOKです。
 でも、社会は違います。社会だけは、どうあがいても知らないと解けないのです。知らなくても工夫すれば解ける問題というのは、社会にはほとんどありません。

 つまり、国数英理の4教科は、一冊目の参考書や映像授業で基礎を理解したら、あとはひたすら問題集をやるという方法でいいのですが、社会だけは二冊目以降の問題集をやるときも、参考書でインプットしてから問題集を解く必要があります。知らないと、問題が解けないのです。

 社会をやるときは、一冊目は他の教科と同じやり方でいいのですが、二冊目以降の問題集をやるときは、一周目を解く前にまず参考書を読みましょう。「困ったときに見る参考書」と同じものでOKです。


ポイント・注意点のまとめ

①勉強が得意な人も、基礎は大事に

 不登校でも、もともと成績が良かった人も多くいると思います。そういう人にとって、基礎の基礎の参考書というのは、「簡単すぎ」「スカスカすぎ」と感じがちです。でも、基礎というのはおろそかにしてはダメです。不登校の場合、授業で身につけるような基礎の範囲を自力で身につけなくてはいけないので、「これは授業の代わり」と割り切って基礎の本を一冊はやりましょう。もともと得意な人なら、基礎の本はすぐに終わらせられると思います。それを終わらせてから、もう少しレベルの高い問題集に手を出しましょう。

②基礎固めでは参考書や映像授業に重点を置き、基礎を脱出したら問題集に重点を置こう

 基礎の段階では、参考書などで理屈を理解して、知識を覚えることに重点を置きましょう。「なんかできそう」だと思っても、説明を飛ばして問題に入ってはダメです。
 なぜなら、間違った解釈で覚えてしまう可能性がありますし、応用がきかなくなるからです。

 一冊目の参考書が終わってある程度知識が頭に入ったら、今度は問題集を重点的にやりましょう。この段階で参考書を読んでも、問題が解けるようにはならないので、あとは問題をどんどん解いてひたすら練習です。

③面倒でも、演習量は確保しよう

 漢字ドリルや計算ドリル、好きだった人はおそらくいないと思います。でも、練習をたくさんするという作業は、実は非常に大切です。やり方がわかる・用語を覚えているからといって問題演習をしないというのは、楽器に例えると「楽譜覚えてるから大丈夫」といって練習をしないままコンクールに行くようなものだからです。特に数学・英語は、演習量をしっかり確保しましょう。

 中3以降で、中学3年分が一冊にまとまった問題集を使いたい人は特に注意しましょう。そういう問題集は、中1からの積み重ねがある人にとっては、サラッと復習するのにぴったりなのですが、イチからやる人にとっては演習量が足りないことが多いです。

④問題数が多すぎるときは――基礎問題だけに絞って完璧にしよう

 「一冊を完璧に」といっても、問題数が多めの問題集だと大変で嫌になりますよね。そういうときは、基礎レベルの問題だけに絞って、完璧を目指しましょう。
 問題集をやるにあたって、「基礎〜標準レベルの正答率が60%」か「基礎レベルだけの正答率が90%」だったら、基礎だけ・正答率90%の方を目指すべきです。基礎さえしっかりできていれば、あとからいくらでも伸びます。

 なので、問題集を見て量が多すぎると感じたら、標準や応用問題のページは飛ばして、基礎のページだけで正答率100%を目指しましょう。基礎だけを先にやって、終わったら標準問題に手を出せばOKです。

ちなみに、問題数が少ない問題集に買い換えるのはおすすめしません。問題数が少ない問題集は、基礎〜標準がギュッとまとまっていることが多く、基礎だけに絞って勉強しづらいからです。

⑤複数の本に手を出さず、一冊の問題集を完璧にしよう

 参考書でも問題集でも、一番やってはいけないのは「複数の本をうろうろする」こと。基本的には一教科につき一冊ずつ決めて、最後までやりましょう。最後までといっても、一周終わらせればいいわけではなく、この問題集のどのページを開いても、自然と問題が解けるというレベルまで何周もして、身についてから次のレベルの問題集を買いましょう。

 市販の参考書や問題集は学習指導要領に沿っているので、レベルが同じなら、どれを使っても内容は大体同じです。「この本には載ってるけどこっちには載ってない」というようなことは、同レベル帯ならほとんどないです。なので、後からこっちの方が良かった……?というような参考書・問題集が他に出てきても、基本的には変えてはダメです。
 それに、参考書や問題集で大事なのは「自分に合っているか」なので、評判が良かったり人からおすすめされたものが自分にも合うかはわかりません。

 ただ、
・レベルが合っていなかった(解説を読んでも全く分からない、問題が解けない)
・何度もやりすぎて答えを丸暗記してしまい、問題を解くということができなくなってしまった
などの場合は、買い替えを考えてもいいかと思います。

⑥記憶の定着のための三箇条――短期間で何度も学習する、一度あたりの範囲は狭く、一度離れて忘れかけた頃に復習する

  人間の脳は寝ている間に、必要な記憶といらない記憶を取捨選択して整理しています。そして、この記憶の取捨選択に関しては、脳はかなりポンコツです。一度勉強したくらいでは、脳はほぼ確実に「これは覚えてなくても別に大丈夫やな」と判断してしまうのです。

 対処法は3つです。
1、短期間で何度も復習する
 →そのままです。一度や二度勉強したくらいではダメです。短期間で何度も繰り返して学習し、脳にこれは忘れてはいけない記憶なのだと分からせましょう。筋トレみたいなものです。パワーは全てを解決します。

2、一度あたりの範囲は狭く
 →脳のキャパには限りがあるので、一度にたくさん詰め込もうとしても覚えられるのは一定量だけです。一度にやる範囲を絞って、「少ない量を確実に覚える」ようにしましょう。

3、一度離れて忘れかけた頃に復習する
 →短期間で何度も復習するのがいいといっても、じゃあ一日中それだけを5周も6周もすればいいのかというとそうではありません。一度やった直後にもう一度やったら、その時は覚えていて当然ですよね。でも、それが一日後、1週間後、1ヶ月後に思い出せる長期記憶になっているのかは分かりません。
 人間にとって一番記憶に繋がりやすいのは、忘れかけた頃に復習すること。そのため、一度勉強したら、一旦離れて違う教科の勉強をしたり、寝たりして脳に忘れさせましょう。そして、しばらく経って短期記憶が消えてからもう一度やりましょう。これが、勉強のやり方で飽きたら違う教科をやることを勧めている理由です。

 例えば、英単語を100個覚えたいとすると、やり方としては

◎ 1番から20番まで覚える→ 一度他の教科をやる、寝る→ 翌日1番から20番まで復習 → 1番から20番までを確実に覚えているか確認 → 21番から40番まで覚える→他の教科をやる、寝る →翌日21番から40番まで復習 →…… の流れ

✖️ 一、二度やっただけで復習をしない (記憶が定着せず、すぐに忘れてしまう)
✖️ 一度に100個全部を覚えようとする (範囲が広すぎて覚えきれない)
✖️ 一周やったあと、すぐに二周目をやる (やったばかりのタイミングで覚えているのは当然、一度忘れかけてから復習するのが大事)

 この記事でご紹介した勉強法は、この原則に則っています。

⑦ノートまとめはやめて、参考書に書き込んでしまおう

 ノートまとめのメリットは「自分なりに情報を整理することになるので、理解が深まる・覚えやすくなる」ことなのですが、べらぼうに時間がかかるというデメリットがあります。ノートまとめとはつまり、時間をかけて自分専用の参考書を作るということなのです。

 でも、自分に合った参考書というのは、別にゼロから作らなくてもいいのです。本屋に行けばありとあらゆる種類の参考書が売っています。その中でわかりやすいものを買って、問題を解いている中で追加したい情報があれば、参考書に書き込んでしまえばいいのです。
 ノート式にまとめたい人におすすめなのは、『テスト前にまとめるノート』シリーズ。穴埋め式でノートが完成しますし、他の情報も書き込める余白が広めです。教科書や参考書に書いてあることを丸写しするという手間をすっ飛ばして、自分専用の参考書を作ってしまいましょう。 

ieben.gakken.jp


 

おわりに

 ここまで読んでくださった方の中には、「演習量は確保しなきゃダメ、間違えた問題はやり直す、一冊を完璧に……めっちゃ大変じゃん」と思う人が多いと思います。
 ……そうなんです。学校で三年間、一日だいたい授業6時間+宿題1時間半くらいの時間をかけてやっていることなので、それを独学でカバーしようと思うと、どうしてもやることが多くなってしまうのです。
 でも、不登校には「自分でやり方や時間配分などなど自由自在に決められる」という強みがあります。学校にいたら、それなんの意味があんの?と思ってしまうような時間も多いですが、家にいれば自分の好きに時間を使えます。教科によってやり方や使う参考書を変えてもいいし、得意教科に時間をかけて伸ばすのも、苦手教科の克服に時間をかけるのも自由です。学校と同じやり方をする必要はまったくないのです。
 せっかくなので、この自由を最大限に活かしてしまいましょう。学校にいたらできなかったことをたくさんやりましょう。皆さんの未来に光があることを祈っています。